まさかの“独り相撲”で終わってしまうのか。巨人・原辰徳監督(61)が今オフに提唱した2大改革案が行き詰まりを見せている。セ・リーグのDH制導入、人的補償の撤廃と相次いで刺激的な持論を展開してきたが、球界全体では議論が活性化するどころか無反応状態。熟練指揮官も、じくじたる思いを抱いているようで…。 

 球界に一石を投じたのは、日本シリーズに敗退した翌10月24日のことだった。

 昨今の日本シリーズや交流戦で「パ高セ低」の現象が起きている一因は、セ・パでDH制の有無が分かれているルールにあると指摘。ソフトバンクに4連敗で屈した直後とあって「負け惜しみだ」などと後ろ指もさされたが、DH制の導入は原監督のそもそもの持論で、高校野球についても早くから「レギュラーが9人から10人になる」と発信してきた。DH制を使用していないのは今やセ・リーグとメジャーのナ・リーグだけで、五輪やWBCなど国際大会でもDH制が“世界基準”ともなっている。

 さらに、原監督が「ふざけてる。なくす必要がありますよ」と主張したのがFA移籍に伴う人的補償の撤廃。最大の目的は選手が獲得したFA権行使の活性化にある。ただ、プロテクトは現行制度で28人しかできず、必然的に発生する「人的補償」のマイナスイメージがFA制度そのものの衰退につながるというものだ。

 どちらのルール改定も、現役の指揮官が訴える異例の事態に当時は大きな話題となったが、その後はどうか。先月上旬に開かれたセ・リーグ理事会ではDH制の導入について議題にも上がらず、同下旬のオーナー会議でも正式な議論は見送られた。そして5日に大阪で開かれた選手会総会でもメインテーマに取り上げられたのは「現役ドラフト」についてだった。ここまで、人的補償についてはプロテクトリストを作成する当事者となった楽天・石井GMが賛同姿勢を示したが、球界全体を巻き込んだ議論と呼ぶには程遠い状況だ。

 遅々として進まない現状を見かねてか、先月下旬に原監督は「ピッチャーに打順が回って三振で(ベンチに)帰ってくる姿は果たして今の時代に合っているのか。やっぱり僕は動くべきだと思いますけどね」と改めてDH制の導入を訴えた。「僕が言っても、なかなか世の中、セントラル・リーグの方も賛成だとか反対だとか言ってくれない。言ってくれないじゃないですか!」と思わず声のトーンを上げるシーンもあった。

 巨人関係者は「DH制も人的補償も“認めろ”という話ではない。反対でも賛成でも双方の意見を出し合い、球界発展のためにみんなで議論しましょうということ。むしろ、監督は何がダメなのか、こうするべきだ、とそれぞれの球団や立場からの主張を待っているはずですよ。あまりの無反応ぶりにイラ立ちもあったのでは? これでは声を上げた意味がない。はたまた、あえて反応しないことが狙いなのか…」と指揮官の思いを代弁したが…。

 このまま本格的な議論に発展することなく“なかったこと”になるのか、それとも――。