セ・リーグの遊撃手は“青森産”が多い。今季ルーキーながら阪神の遊撃手として活躍した木浪聖也内野手(25)と、2年前に新人王に輝いた中日の京田陽太内野手(25)は、かつて同じチームで二遊間を組むチームメートだった。

 2人が所属した青森山田高の元監督で現在は同校のスポーツアドバイザーを務める渋谷良弥氏は「よく言われるんですよ、木浪と京田がいてなんで甲子園に行けなかったんだって。だからこう言うんです、あのときは光星に北條と田村がいたんだって。それで納得してもらうんですけどね」と懐かしむ。光星学院(現八戸学院光星)が甲子園3季連続準優勝を果たした2012年。青森山田は現阪神・北條と現ロッテ・田村擁する同校に青森大会3回戦で延長戦の末に惜敗した。

 若き日の2人について渋谷元監督は「京田は大阪桐蔭の西谷監督が狙っていたくらいの逸材。入学したときから抜けていた。対する木浪はセンスはあったけどまだ線が細くて、当時はすべてにおいて京田のほうが上でしたね。ただ性格は木浪の方がプロ向きで、阪神に決まったときも『絶対に北條には負けませんから』と電話してきたくらい。この2人を競わせたら面白くなると思って、うまくプライドを刺激してやりましたね」と振り返る。

 出身地は違えど、木浪、京田、北條と同時期の青森からリーグを代表するショートが次々と生まれた理由は何なのか。渋谷元監督は彼らの6年前、ドラフト1位で巨人に進んだ坂本勇人の影響が大きいと見る。「彼とは何度も対戦しましたが、木浪や京田と比べたら失礼。チームではなくいかに彼を抑えるか、それくらいの選手だった。うまい子はみんな彼を目指して青森にやってくる。青森の誇りですよ」。いずれは木浪や京田にも、坂本勇に並ぶ名手に育ってほしいというのが恩師の願いだ。

「京田はプロとして優しすぎる。根尾くんにいろいろ教えてあげて、来年抜かれましたじゃ話にならない。木浪は逆に調子に乗るクセがあって、オープン戦であれだけ打って『監督、明日もスタメンですよ』と毎日電話してきたり。案の定、シーズンは甘くないでしょう。また春に沖縄キャンプで2人に会えるのを楽しみにしてますよ」

 セ・リーグを代表する“青森産”のショートたち。互いに切磋琢磨しながら、いいライバルであり続けるに違いない。