赤チョーノの気になる本心は…。広島・長野久義外野手(34)が3日、3―0で勝利を収めたヤクルト戦(神宮)に巨人時代の16年7月以来、3年ぶりの4番打者として先発出場。結果は3打数無安打だったが先制点につながる四球を選ぶなど、2度の出塁で存在感を示した。ここにきての中軸起用はベンチの期待の表れだが、季節はすでに秋。鯉党の熱い視線を集める背番号5の扱いには球団も気をもんでいる。

 試合前の神宮球場。広島の先発オーダーが発表されると、真っ赤に染まった左翼と三塁側スタンドから、どよめきに似た大歓声が上がった。拍手の先にいたのは「4番・左翼」で先発出場の長野だ。1日のDeNA戦(マツダ)では2番で出場して今永から2安打を放っていたが、思い切った抜てきに東京の鯉党も驚きを隠せなかった。

 大声援を受けながら結果は無安打だったが、2回の第1打席は先頭で相手左腕・高橋から四球を選び、先制の本塁を踏んだ。第2打席は三塁への痛烈な打球で太田のグラブをはじいて出塁(記録は失策)。試合後、東出打撃コーチは「今日は誠也の後を打つ打者が大事だった。(長野は)見ていてスイングがいいよね」と評価した。

 長野4番起用の意図について、緒方監督は「松山をここまで4番手においてきたけど、本人も出っぱなしで下半身のキレが悪くなっていた。元気な人、経験のある人が、というところで長野に」と説明。今後の起用法こそ明言しなかったが「状態自体は悪くない。頑張ってもらわないと」と活躍に期待を込めた。

 ペナントレースは残り16試合。2位DeNAを3差で追う一方、4位阪神には2・5差に迫られている。首脳陣は修羅場をくぐった長野の経験に期待を寄せるが、球団が気にするのは4連覇の望みがほぼついえた今になって頼られる本人の胸の内。FA権を持つだけに、フロント内からは「来年も残ると言ってくれるだろうか」と心配する声が聞こえている。

 長野が7月上旬から2か月近い二軍生活を送っていた間、フロントは腐らずに若手と汗を流す姿を高く評価していた。一方で現場に口出しこそしなかったが「こんなに長く二軍にいる選手じゃないのに」と昇格が一向に検討されないことにジレてもいた。戦力と見込んで獲得にあたった側とすれば当然の反応だろう。

 2試合連続の先発出場は実に6月18日ロッテ戦以来。「やっと出番がきたね」と喜ぶ球団幹部は「現場がどう使うかはこっちが決められることじゃない。ただ我々は成績以外の働きも評価しているし、入団以来の振る舞いにも感謝している。これから必ずウチの力になってくれる選手だと信じているし、来年以降も残ってほしいという思いはある」と話すが…。

 試合後は「チームが勝つためのバッティングをしっかりしたい」と今後の貢献を誓った背番号5。背中に浴びた大声援と球団の思いは心にどう届いているか。