来季の去就が注目されている中日・松坂大輔投手(38)が今季限りでの退団も覚悟した上で、現役続行の意思を固めていることが30日、分かった。球団側は来季契約について現時点では白紙のままを強調しているが、球団から今後、たとえ戦力外通告を受けようとも、あくまで本人は移籍先を求めて現役続行にこだわり続けていくという。

 右ヒジ炎症で二軍調整中の松坂の来季去就を巡って周囲が騒がしくなってきた。

 ここにきて加藤宏幸球団代表(60)が近日中にも松坂と会談することを示唆。「話し合うというか、彼の意向を聞くだけです。本人の意思を確認した方がいいと思って。彼がやりたいと言ったとしても、球団が来年契約するかは別の話で分からない。たまたま彼が名前がある球界の功労者の一人ということでみんなが注目しているけど、功労者だから残すとかそういう話ではない」と白紙であることを訴えている。

 こうした球団サイドの意向に松坂サイドの関係者が反応。「本人の意向を聞くと言っても、ユニホームを着た選手であれば全員が現役続行にこだわるのは当たり前のこと。万一、松坂が現役を引退したいという意向を持っているなら話し合いたいというのは分かるけど、そうでないなら松坂の意向を聞く必要はないし、なぜ球団はシーズン中のこのタイミングでそんなことを言いだしているのか…。まるで松坂と契約をしない方向へ外堀を埋めていっているようにしか見えない」と指摘する。

 松坂本人も戸惑いを隠せない。30日はナゴヤ球場で治療だけでなく、キャッチボールやダッシュなどを行って汗を流したが、球団側が会談する方針であることにも「僕、何も聞いてないです」とだけ言い残して球場を後にした。

 現況が崖っ縁であるのは確かだ。ソフトバンクから中日へ移籍1年目の昨季は6勝をマークした松坂だが、今季は2月のキャンプ中に右肩を負傷して調整が大幅に遅れ、一軍登板はわずか2試合にとどまり、0勝1敗、防御率16・88。初登板となった7月16日の阪神戦(ナゴヤドーム)は5回2失点と粘ったが、同27日のDeNA戦(ナゴヤドーム)では初回に一死を取っただけで8安打8失点と大炎上して自己最短KOの屈辱を味わった。

 このまま松坂は中日から戦力外通告を受け、現役続行も厳しいのか…。だが、松坂と親しい関係者はそれを否定。「メジャーでもソフトバンクでも戦力外通告を経験している松坂にとって、こういう騒がれる時期がまた来たぐらいにしか思っていないよ。仮に、中日を退団するようなことになったとしても、どこに行ってでも、現役続行の気持ちが揺らぐことはないと考えている」と力説する。

 しかし、前出の関係者は「松坂は球団から会談をしたいとか、まだ何も聞かされていないので、本人から何も話しようがない状態。結果が残せなくて戦力外になるのは仕方がないことだけど、シーズンも残り試合が少なくなって、今季の一軍復帰にかける松坂にとって一日一日が大事な時期なのに、こういう事態になってしまってかわいそう」と胸中を思いやる。

 令和となっても現役続行にこだわる「平成の怪物」がどうやって苦境を乗り越えていくのか。気になるところだ。

【「独立リーグ」の選択肢も】松坂が現役続行を望むのは「ボロボロになるまでやる」という自身の美学によるものが大きい。

 ソフトバンク退団時も、獲得に手を挙げる球団はなかなか現れなかったが、年明けにどうにか中日の入団テストを受ける状況にこぎつけ、キャンプ直前の2017年1月23日に非公開で入団テスト。当時の森監督の「投げられれば合格」という計らいもあって、同日に入団を果たした。

 中日を退団となった場合、今回は前回以上に国内他球団への移籍は厳しい現実と直面しそうだ。大スターとはいえ、来年で40歳の故障持ちの選手ということもあり、中日初年度と同様、格安の条件(推定年俸1500万円)からのスタートとなるだろう。

 中日1年目の「松坂フィーバー」の再現を期待する球団や、将来の監督、コーチ含みのメリットを考慮して獲得に動く球団もあるかもしれないが、どこも手を挙げなければ「独立リーグ」という選択肢も浮上してくる。その場合は、家族が滞在する米国の独立リーグでもう一度、メジャー復帰を目指すか、国内の独立リーグでNPB復帰を目指すことになるが、国内でNPB復帰を目指すならば来年の7月末が復帰のメドになる。