名古屋メシの帝王が、愛する中日ドラゴンズに激熱エールを送った。名古屋人なら誰もが知っているみそかつの名店「矢場とん」の鈴木孝幸会長(72)は、「2年に一度は優勝争いするチームに」と低迷からの脱却を熱望。「与田監督はG・N・O(義理・人情・恩返し)が分かる人。ドラゴンズの氷河期を打ち破ってくれるはず」と指揮官に期待する一方で、「全然補強していない」と強竜復活に向けて球団サイドのバックアップを訴えた。

 名古屋をはじめ東京、大阪など全国に21店舗を展開する「矢場とん」の鈴木会長は、実は誰よりもドラゴンズの歴史に詳しい人物でもある。大学時代にはナゴヤ球場でスコアボード係のアルバイトをしており、そのころから中日ナインと親交を深めていた。

 高木、星野、大島、谷沢、田尾、小松、牛島、立浪、山本昌、今中…。歴代の主力選手たちは皆、ナゴヤ球場で販売されていた矢場とんの串カツやみそかつを食べてプレーしてきた。

「ナゴヤ球場にのれんのある店が欲しいと頼まれて、矢場とんは昭和46年からバックスクリーン裏に出店したんです。でも昭和49年に優勝するまでは外野席はガラガラだった。外野席にはお客さんがいないから、練習中に選手といろいろ話をしたりしてみんなと仲良くなった。今も若い選手たちは矢場町の店に食べに来てくれる。やっぱりドラゴンズには頑張ってほしいよね」

 与田剛監督(53)とも現役時代から親交があった鈴木会長だが、竜の指揮官になるとは全く想像していなかった。だが、監督就任後の謙虚な姿勢や選手への人情味あふれる対応には、ひそかに感心しているという。

「与田監督は就任したときにあいさつに来てくれました。“オレは監督だ”という態度を取らず、人に頭を下げることのできる男です。どんな人に対しても普通に接している。G(義理)・N(人情)・O(恩返し)が大切だと自分は思うんだけど、与田監督は義理・人情・恩返しを知っている。その姿勢は素晴らしい。以前、与田監督から『名古屋でスーツを作っている人を知りませんか』と電話がかかってきたことがあったんです。外国人選手のサイズに合うスーツがなかなかないらしくて。給料の安い外国人選手はスーツを持っていないので、監督が自分で手配してあげた。昔、星野監督は給料の安い若い選手から取った罰金を、オフになると選手の親に送っていた。そういった気遣いや優しさを与田監督は受け継いでいると思うんです」

 3、4月は13勝13敗と5割でスタートした中日だが、5月は10勝14敗、6月は1勝7敗(10日現在)でついに借金は2桁に突入。それでも若手を積極的に起用する与田監督に、鈴木会長は大きな期待を寄せている。

「(松坂、平田、福田、笠原ら)これだけ故障者が出ている中でよくやっていますよ。負けてもお客さんは納得していると思う。去年まではワンサイドゲームが多かったけど、今年はそういう試合が少ない。与田監督は伊東ヘッドコーチや阿波野投手コーチ、村上打撃コーチら、自分が選んだスタッフを信頼しているように見えます。若い選手をどんどん使っているし、コーチや二軍とのパイプもしっかりできている。与田監督はドラゴンズの氷河期を打ち破ってくれる期待を持たせる人。今は忍の一字です」

 中日は6年連続Bクラスと長期低迷状態に突入している。強いドラゴンズの復活は多くの名古屋人の願いでもあるが、そのために最も必要なのは球団サイドのバックアップだと鈴木会長は訴える。

「星野監督が亡くなる少し前に、うちの70周年記念パーティーに来てくれたんです。そのときに『ドラゴンズが強くないとナゴヤドームは満員にならない』と言っていた。やっぱり勝たないとファンは納得してくれない。でも今の中日は戦力を何も補強していない。選手の年俸総額もセ・リーグでドベだがね。今季も巨人は岩隈や丸、炭谷、阪神も西らを獲得している。やっぱり2年に一回は優勝争いに絡むチームにしてほしい。そのためにはドラフトだけの補強ではダメ。『マネーゲームはしない』と言っているけど、勝負するときはしなきゃ! 強いドラゴンズが復活して名古屋を盛り上げてほしいね」