目指せ!「ヤングダービー」U-30の咆哮

【喜井つかさ(26=岡山103期)】数年前に目標を尋ねた時「仲良くさせてもらっている同県の樋口(由加里)さんたちと一緒にプレミアムGIレディースチャンピオンに出ること。それにはA級にならないと…」と当時は勝率アップに奮闘していた。

 その後、14年8月の三国レディースチャンピオンでGI初出場を果たし、その目標は達成。2か月後には大村で念願の初優勝も飾った。

「本当に勝ったのか実感がなくて…。頬を自分でつねりましたよ。実はあの大会、準優が終わって優勝戦まで2日間も延期したんですよ。好枠だった竹井(奈美)選手はプレッシャーもあったと思うけど、自分は4枠だったし、そこはリラックスして自然体で挑めた。これが大きかった。まあ、それが勝っても本当に自分が優勝したのかな?とすぐに実感が湧かなかった理由でもあると思いますけど(笑い)」

 つい昨日のことのように思い出の一戦を振り返った。一見、順風満帆にステージアップを図ってきたようにも見えるが、そこには勝負の世界の厳しさも待ち受けていた。“好事魔多し”――。この優勝直後には一転して地獄の苦しみも味わうことになる。

「初優勝の後、気持ち的にホッとした部分がありましたね。そのあとすぐに事故でケガ(一昨年11月)をしてしまって…。今思えばですけど、これは気の緩みがあったなと…。いつのレースも常に集中してないとダメだなって思わされた」

 歓喜の直後に訪れたのは左腕骨折という現実。勝負の世界に身を置くことの厳しさ、つらさを改めて痛感したという。

 本格的な戦列復帰は昨年6月。復帰以降は「走れることに幸せを感じる」と純粋にレースをできるうれしさを感じる半面「まだ腕に残ってるプレートを(今後)外さないといけない。休めばまた握力とかが低下するし、その影響でまた体がどうなるか…。そこが心配」と不安も抱えている。

 それでも「今の課題は体づくり。ジムに行って体幹を鍛えたり、レースに必要な筋力をつけて準備してます」と不安を一掃するべく、常に前向きな姿勢で、レース以外の日もオフのない生活を続けている。

 そんな努力家・喜井の現在の目標は「A2キープは最低限のノルマとして、A1級への昇格と2度目の優勝。あとは地元・児島での優勝」と貪欲な姿勢を見せており、精神面での成長もうかがえ、頼もしさを感じさせる。

 心身の充実を成し得た時こそ、次のステージが待っている。

☆きい・つかさ=1990年1月14日生まれ。岡山県出身、岡山支部の103期生。2008年11月に児島でデビュー。10年9月の住之江女子リーグ戦で初勝利を挙げる。初優出は12年8月の下関、初優勝は14年10月の大村で達成。同期は深谷知博、黒井達矢、秋元哲、渡辺和将に女子では小野生奈、市村沙樹ら。血液型=B。