舟券的中への近道 ボートレースアカデミー

【ノーハンマー】直訳すると「ハンマーを使わない」。つまり、プロペラを叩かないことを指す。シリーズ中は気温や気圧の変化に応じ、ペラを叩きながらエンジンを仕上げていくのが普通だが、ごくまれに一度もペラを叩かずにシリーズを全うする選手がいる。

 ノーハンマーには大きく2パターンある。もともとペラ調整をあまりしないタイプ(ペラが苦手な選手含む)と、ペラを叩かなくても足が抜群にいい場合。前者で代表的なのはペラよりエンジン整備に重きを置く吉田弘文だ。実際、13年9月の多摩川59周年記念では一度もペラに触れることなくGⅠ初優勝を達成。昨年の下関SGチャレンジカップでも太田和美がノーハンマーを貫いて優勝した。気象条件の変化もあったが「勝てるだけの足があれば余計なことはしない」というポリシーを持つ太田がたまに行う泰然自若の戦法だ。グランプリ3Vの田中信一郎も同様の持論があり、先のSGダービーでは3日目までノーハンマー。「ペラを叩くことと成績の良しあしは関係なく、自分の足に納得しているかどうか。人の評価も一切気にしない。自分がいいと思ったら叩かない」と鉄の意志を持っている。

 様々な理由があるが、基本的に「ノーハンマー」のときは「足がいい」と判断して良さそうだ。

【節一(せついち)】ボート面に「節一パワー!」「節一宣言!」の見出しが躍ることがある。読んで字のごとく「その“節”(シリーズ)で“一番”仕上がったエンジン」のこと。

 ポテンシャルが最も優れている好素性エンジンを「エース機」と呼ぶのに対し、「節一」とは実際にレースで一番パワフルに仕上がったエンジンを指す。

 選手のコメント欄にもたびたび登場するが、ハッキリと「節一です!」と言い切る選手もいれば、明言を避ける人もいる。「どんなに良くても他の全員と比べたわけじゃないから…」と発言に慎重になるレーサーもいるが、先日の浜名湖SGダービー覇者・守田俊介は優出会見で「出足は節一レベルだと思います」と公言。このように「節一クラス」「節一級」とややボカして使う選手は多い。

 ハッキリとコメントする代表的なレーサー峰竜太は「リップサービスの意味合いもありますね。単に『エンジンいいです』と言うより『節一です』の方がインパクトあるし、新聞に載るときも目立つ。戦う相手がそれを見てプレッシャーに感じる可能性もあるので」と持論を語る。

 最後に“取材あるある”を。抜群に出ている選手に「節一です」と無理に言わせようとすると嫌がられる。「北風と太陽」ではないが誘導尋問はよくない。