舟券的中への近道 ボートレースアカデミー

 当アカデミーではボートレーサーが所属する全国18支部の特徴や傾向に焦点を当ててきたが、今回は「支部紹介」の最終回。全国的にも強豪揃いの福岡、佐賀、長崎の「九州3支部」をドーンと紹介しよう。

<福岡支部>若松、芦屋、福岡と3場を抱える福岡支部には総勢210人(2015年前期現在)と全国一のボートレーサーが所属している。また、選手“量”だけではなく、“質”という点でも全国トップレベルと言え、現役レーサーでは最長の5年連続(09~13年)SGV歴あるエース・瓜生正義を筆頭に、田頭実、今村暢孝、藤丸光一、白水勝也、鳥飼真、吉田弘文、平田忠則、岩崎正哉、松尾昂明、今井貴士、岡崎恭裕、篠崎元志、篠崎仁志、前田将太と多くの記念ホルダーが存在。また、14年の最優秀新人に輝いた江崎一雄、今年の全国スター候補に名を連ねる松田大志郎と次世代を担う存在も次々と誕生している。

 ただ、この大所帯全てをまとめることは容易ではない。そのため、福岡支部では昔から大きく4つ(洞南会、芦屋会、筑豊会、筑紫会)のグループに分かれて活動していたが、ある若手選手に聞くと「僕は洞南会に所属してます。ただ、このグループもペラ制度が変わって少し風化されてきた感じかな。でも、九州人独特の結びつきの強さというか、グループ以外の先輩でもいろいろとアドバイスをもらえる。福岡支部はそこがすごくいいですね」という。この垣根を越えたつながり、面倒見の良さが現在の福岡支部の強さだろう。

<佐賀支部>SG、記念戦線では峰竜太、深川真二が活躍中。現選手会会長の上滝和則からパスを受けた2人が、しっかりと支部を支えている印象を受けるが、意外や意外、はたから見るほど順風満帆とは言えない。

 古い時代には唐津地区とその他郡部との間に確執があったというが、現在ではさすがにそれは存在せず、みんなで佐賀支部を盛り上げていこうという雰囲気がある。

 ひとえにカリスマ的魅力がある上滝の功績だ。限定的に実戦復帰した昨年8月の盆レースでは、いるだけでピリッとした空気となった。いまだにその存在感は圧倒的だ。

 深川、長溝一生の強力ラインには、一時距離を置いていた宮地元輝が“復縁”し厚みを増した。また、親しみやすいタイプの峰には上野真之介、山田康二が参謀役として脇を固める。これに三井所尊春、古賀繁輝、中尾誠、森永淳らが加わり、今の佐賀支部をけん引している。

 ひとつ問題なのは彼らの次の世代。SG、記念常連として峰、深川に次ぐ選手が現れないことだ。北川太一、武富智亮、高田明と好素材がいるものの、あとひと皮、ふた皮むけなくてはいけないのが現実。さらに、女子となるともっと状況は厳しく、力を持った選手といえば太田雅美までさかのぼらなくてはならない。隣の福岡支部からは男女とも次々とスターが誕生しており、その点を比較すると、圧倒的なタレント不足は大きな課題といえるだろう。

<長崎支部>全国24場で最西端に位置し長崎支部の総勢59人(女子5人)の選手が本拠地とするボートレース大村。大きく分けると大村市、諫早市、長崎市、佐世保市の4つの地域に分類される。

 地元の大村では中嶋誠一郎が中心となる石橋道友、下條雄太郎、大串重幸、山戸信二、江頭賢太のグループと、山口哲治をリーダーに津留浩一郎、山口裕二のグループ、尾崎鉄也、森林太、赤坂俊輔らのグループに分かれる。諫早は上之晃弘を中心に岩永節也、真庭明志、桑原悠ら。長崎は中村義雄のもとで育った川上昇平が現在のまとめ役で樋口亮、池田紫乃、吉田敦志、中村辰也と滝川真由子の夫妻、谷川将太、坪口竜也、吉川勇作らが切磋琢磨する。佐世保は飯山晃三が山崎昂介、中島浩哉、村上遼、仁科さやか、山田貴愛らを束ねる。

 地区別に色分けはされるが「長崎はひとつだ!」というスローガンのもとグループ間に垣根はない。ある意味、一枚岩といってよく、肩を寄せ合いスキルの向上に励む。GⅠ戦では山口哲治がV2、尾崎鉄也、井川真人、山口博司、吉田一郎、赤坂がV1しているが、残念なことに現役レーサーでSGホルダーはいない。09年のとこなめSG「オーシャンC」で石橋が優出4着したのが最高成績。ボートレース発祥の地としてはちょっと寂しいが、長崎ツートップの赤坂、石橋が「上を目指せ」の合言葉のもとさらなる成長を遂げれば下條、桑原や村上、吉川ら伸びシロのある選手が全国に羽ばたく日も近い。